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「相続させる」遺言について(その1)

「相続させる」遺言について(その1)

播磨町(土山)の司法書士 北谷です。
今回は遺言から。

特定の遺産を特定の相続人に相続させる遺言、たとえば、「長男甲にA土地を相続させる。二男乙にB土地を相続させる。」といった遺言を実務上「相続させる」遺言と呼んでいます。

現在なされている遺言の内容で最も一般的なこの遺言について考えてみたいと思います。

この遺言の内容の解釈については、従来より判例や学説の見解が分かれていました。
しかし、平成3年4月19日の最高裁判決により、それまでの議論に一応の決着がつきました。この判決の要旨は、

一 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきである。
二 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継される。

また、その後、遺言執行者の権限に関して、次の2つの最高裁判決がなされています。

【平成7年1月24日最高裁判決要旨】

特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる旨の遺言により、甲が被相続人の死亡とともに相続により当該不動産の所有権を取得した場合には、甲が単独でその旨の所有権移転登記手続をすることができ、遺言執行者は、遺言の執行として右の登記手続をする義務を負うものではない。

【平成11年12月16日最高裁判決要旨】
本件のように、甲への所有権移転登記がされる前に、他の相続人が当該不動産につき自己名義の所有権移転登記を経由したため、遺言の実現が妨害される状態が出現したような場合には、遺言執行者は、遺言執行の一環として、右の妨害を排除するため、右所有権移転登記の抹消登記手続を求めることができ、さらには、甲への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることもできると解するのが相当である。
この場合には、甲において自ら当該不動産の所有権に基づき同様の登記手続請求をすることができるが、このことは遺言執行者の右職務権限に影響を及ぼすものではない。

以上により、「相続させる」遺言については、現状次のような取扱いがなされています。

1.遺産分割方法を指定(民法908条)したものである。
 ⇒遺言の効力発生(遺贈者の死亡)により、何らの行為を要せず、特定の相続人が遺産を確定的に取得する。
 ※遺産共有状態を経ずに、直ちに特定の相続人の所有となり、この遺言により取得した権利は、対抗要件(登記)を具備することなく第三者に対抗できる。
 ※特定の相続人が遺言により取得することとなった財産が法定相続分を超える場合には、遺産分割方法の指定とともに、相続分の指定(民法902条)も行われたと解される。
 ※「遺産の全部を長男甲に相続させる。」といった内容もあり得る。特定財産についての「相続させる」遺言の集合体と見ることが出来るため。

2.「相続させる」遺産が不動産である場合、遺言書に遺言執行者が指定されている場合でも,登記手続ができるのは当該相続人のみであって、遺言執行者が代理人として登記手続きを行うことは出来ない。
 ただし、遺言の実現が妨害されるような状態が出現した場合には、遺言執行者は、その妨害を排除するため、是正の登記(所有権抹消登記や真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記)手続を求めることが出来る(特定の相続人も同様の登記手続を求めることが出来るが、このことは遺言執行者の権限に影響を及ぼさない。)。

次回は遺言書の文言と登記原因、「相続させる」と「遺贈する」のいずれの文言にすべきかついてまとめます。

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